から二、三日たって、浦島はまた舟にのって海へつりに出かけました。遠い沖《おき》のほうまでもこぎ出して、一生《いっしょう》けんめいおさかなをつっていますと、ふとうしろのほうで
「浦島さん、浦島さん」
とよぶ声がしました。おやとおもってふりかえってみますと、だれも人のかげは見えません。その代《かわ》り、いつのまにか、一ぴきのかめが、舟のそばにきていました。
浦島がふしぎそうな顔をしていると、
「わたくしは、先日|助《たす》けていただいたかめでございます。きょうはちょっとそのお礼《れい》にまいりました」
かめがこういったので、浦島はびっくりしました。
「まあ、そうかい。わざわざ礼なんぞいいにくるにはおよばないのに」
「でも、ほんとうにありがとうございました。ときに、浦島さん、あなたはりゅう[#「りゅう」に傍点]宮《ぐう》をごらんになったことがありますか」
「いや、話にはきいているが、まだ見たことはないよ」
「ではほんのお礼のしるしに、わたくしがりゅう[#「りゅう」に傍点]宮を見せて上げたいとおもいますがいかがでしょう」
「へえ、それはおもしろいね。ぜひ行ってみたいが、それはなんでも海の底
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