が、子どもたちはきき入れようともしないで、
「なんだい。なんだい、かまうもんかい」
といいながら、またかめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、砂《すな》のなかにうずめたりしました。浦島はますますかわいそうにおもって、
「じゃあ、おじさんがおあし[#「おあし」に傍点]をあげるから、そのかめの子を売っておくれ」
といいますと、こどもたちは、
「うんうん、おあし[#「おあし」に傍点]をくれるならやってもいい」
といって、手を出しました。そこで浦島はおあし[#「おあし」に傍点]をやってかめの子をもらいうけました。
 子どもたちは、
「おじさん、ありがとう。また買っておくれよ」
と、わいわいいいながら、行ってしまいました。
 そのあとで浦島は、こうら[#「こうら」に傍点]からそっと出したかめの首《くび》をやさしくなでてやって、
「やれやれ、あぶないところだった。さあもうお帰りお帰り」
といって、わざわざ、かめを海ばたまで持って行ってはなしてやりました。かめはさもうれしそうに、首や手足をうごかして、やがて、ぶくぶくあわをたてながら、水のなかにふかくしずんで行ってしまいました。
 それ
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