《くも》がどんどん空の上に固《かた》まって出て来た。
「さあ、子どもたち、早くうちへ帰らなければいけない」とお父さんが言った。
「もう」みんなはいっしょにさけんだ。
リーズは口はきけなかったが、やはり帰るのはいやだという身ぶりをした。
「さあ行こう」とお父さんがまた言った。「風が出たらガラスのフレームは残《のこ》らず引っくり返される」
これでもうだれも異議《いぎ》を申し立てなかった。わたしたちはみんなフレームの値打《ねう》ちを知っていた。それが植木屋にどれほどだいじなものかわかっていた。風がうちのフレームをこわしたら、それこそたいへんなことであった。
「わたしはバンジャメンとアルキシーを連《つ》れて先へ急いで行く」とお父さんが言った。
「ルミはエチエネットと、リーズを連れてあとから来るがいい」
かれらはそのままかけだした。エチエネットとわたしはリーズを連れてそろそろ後からついて行った。だれももう笑《わら》う者はなかった。空がだんだん暗くなった。あらしがどんどん来かけていた。砂《すな》けむりがうずを巻《ま》いて上がった。砂が目にはいるので、わたしたちは後ろ向きになって、両手で目をお
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