家なき子
SANS FAMILLE
(下)
マロ Malot
楠山正雄訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)往来《おうらい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|銭《せん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+欣」、第3水準1−87−48]
−−

     ジャンチイイの石切り場

 わたしたちはやがて人通りの多い往来《おうらい》へ出たが、歩いているあいだ親方はひと言も言わなかった。まもなくあるせまい小路《こうじ》へはいると、かれは往来の捨《す》て石《いし》にこしをかけて、たびたび額《ひたい》を手でなで上げた。それは困《こま》ったときによくかれのするくせであった。
「いよいよ慈善家《じぜんか》の世話になるほうがよさそうだな」とかれは独《ひと》り言《ごと》のように言った。「だがさし当たりわたしたちは一|銭《せん》の金も、一かけのパンもなしに、パリのどぶの中に捨《す》てられている……おまえおなかがすいたろう」とかれはわたしの
次へ
全326ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング