いた例《れい》のハープを外《はず》して持って来る。そうして四人の兄弟|姉妹《しまい》におどりをおどらせる。だれもかれもダンスを習った者はなかったが、アルキシーとバンジャメンは一度ミルコロンヌで婚礼《こんれい》の舞踏会《ぶとうかい》へ行って、コントルダンスのしかただけ多少|正確《せいかく》に記憶《きおく》していた。その記憶がかれらの手引きであった。かれらはおどりつかれると、わたしに歌のおさらいをさせる。そうしてわたしのナポリ小唄《こうた》はいつも決まって、リーズの心を動かさないことはないのであった。
このおしまいの一|節《せつ》を歌うとき、かの女の目はなみだにぬれないことはなかった。
そのとき気をまぎらすために、わたしはカピと道化芝居《どうけしばい》をやるのであった。カピにとってもこの日曜日は休日であった。その日はかれにむかしのことを思い出させた。それで一とおり役目を終わると、かれはいくらでもくり返してやりたがった。
二年はこんなふうにして過《す》ぎた。お父さんはわたしをよくさかり場や、波止場や、マドレーヌやシャトードーやの花市場へ連《つ》れて行ったり、よく花を分けてやる花作りの家
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