《ざいさん》、わたしの創造《そうぞう》であった。だからよけいわたしに得意《とくい》な感じを起こさせた。
それで自分がどういう仕事に適当《てきとう》しているかがわかった。わたしはそれをやってみせた。そのうえよけいわたしをゆかいにしたことは、まったくこれでは骨折《ほねお》りのかいがあると感じ得《え》たことであった。
この新しい生活はなかなかわたしには苦しかったが、しかしこれまでの浮浪人《ふろうにん》の生活と似《に》ても似つかない労働《ろうどう》の生活が案外《あんがい》早くからだに慣《な》れた。これまでのように自由気ままに旅をして、なんでも大道を前へ前へと進んで行くほかに苦労《くろう》のなかったのに引きかえて、いまは花畑の囲《かこ》いの中に閉《と》じこめられて、朝から晩《ばん》まであらっぽく働《はたら》かなければならなかった。背中《せなか》にはあせにぬれたシャツを着、両手に如露《じょろ》を持って、ぬかるみの道の中を、素足《すあし》で歩かなければならなかった。でもぐるりのほかの人たちも、同じようにあらっぽい労働《ろうどう》をしていた。お父さんの如露はわたしのよりもずっと重かったし、そのシャ
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