大きなつばさをしょってはいないで、やはりわれわれただの人間と同様にしていることをふしぎに思ったりした。
わたしの病気は長かったし、重かった。快《こころよ》くなってはたびたびあともどりをしたので、ほんとうの両親でもいやきがさしたかもしれなかった。でもエチエネットはどこまでもがまん強く誠実《せいじつ》をつくしてくれた。いく晩《ばん》かわたしは肺臓《はいぞう》が痛《いた》んで、息がつまるように思われて、ねむられないことがあった。それでアルキシーとバンジャメンが代わりばんこに、寝台《ねだい》のそばにつききりについていてくれた。
ようようすこしずつ治《なお》りかけてきた。でも長い重病のあとであったから、すこしでもうちの外に出るには、グラシエールの牧場《ぼくじょう》が青くなり始めるまで待たなければならなかった。
そこで用のないリーズがエチエネットの代わりになって、ビエーヴル川の岸のほうへわたしを散歩《さんぽ》に連《つ》れて行ってくれた。真昼《まひる》の日ざかりに、わたしたちはうちを出て、カピを先に立てて、手を組みながらそろそろと歩いた。その年の春は暖《あたた》かで、日和《ひより》がよかった。
前へ
次へ
全326ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング