対して、いろいろうまいことばのかぎりをつくして説《と》いたが、承知《しょうち》させることができなかった。かれはわたしをどうしても看病しなければならないと考えた。そしてまったく看病してくれた。
こうしてあり余《あま》る仕事のあるうえ、エチエネットにはまた一つ、看護婦《かんごふ》の役が増《ふ》えた。でもセン・ヴェンサン・ド・ポールの尼《あま》さんがするように、親切にしかも規則《きそく》正しく看護《かんご》してくれて、けっしてかんしゃく一つ起こさないし、なに一つ手落ちなしにしてくれた。かの女が家事のためにどうしてもついていられないときには、リーズが代わってくれた。たびたび熱《ねつ》にうかされながら、わたしは寝台《ねだい》のすそで不安心《ふあんしん》らしい大きな目をわたしに向けているかの女を見た。熱にうかされながらわたしはかの女を自分の守護天使《しゅごてんし》であるように思って、天使に向かって話をするように、自分の望《のぞ》みや願《ねが》いをかの女に打ち明けた。このときからわたしは我知《われし》らずかの女を、なにか後光に包《つつ》まれた人間|以上《いじょう》のものに思うようになり、それが白い
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