きつくような感じ)を感じた。病気は肺炎《はいえん》であった。それはすなわちあの晩《ばん》気のどくな親方とわたしがこの家《や》の門口《かどぐち》にこごえてたおれたとき、寒気のために受けたものであった。
でもこの肺炎《はいえん》のおかげで、わたしはアッケン家の人たちの親切、とりわけてエチエネットの誠実《せいじつ》をしみじみ知ったのであった。びんぼうなうちではめったに医者を呼《よ》ぶということはないが、わたしの容態《ようだい》がいかにも重くって心配であったので、わたしのため特別《とくべつ》に、習慣《しゅうかん》のためいつか当たり前になっていた規則《きそく》を破《やぶ》ってくれた。呼ばれて来た医者は長い診察《しんさつ》をしたり、細かい容態を聞いたりするまでもなく、いきなり病院へ送れと言いわたした。
なるほどこれはいちばん簡単《かんたん》で、手数がかからなかった。でもこの父さんは承知《しょうち》しなかった。
「ですがこの子はわたしのうちの門口でたおれたんですから、病院へはやらずに、やはりわたしどもが看病《かんびょう》しなければなりません」とかれは言った。
医者はこの因縁論《いんねんろん》に
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