についてなにもかもかぎ出してしまった。
「この子をガロフォリというやつの所へ連《つ》れて行くよりほかにしかたがない」と、かれは部下の一人に言った。「一度この子の言うルールシーヌ街《まち》へ連《つ》れて出れば、すぐその家を見つけるよ。きみはこの子といっしょに行って、その男を尋問《じんもん》してくれたまえ」
わたしたち三人――巡査《じゅんさ》とお父さんとわたしは、いっしょに出かけた。
署長《しょちょう》が言ったように、わたしはわけなくその家を見つけた。わたしたちは四階へ上がって行った。マチアはもう見えなかった。警官《けいかん》の顔を見て、それから見覚《みおぼ》えのあるわたしを見つけると、ガロフォリは青くなって、ぎょっとしたようであった。けれどみんなの来たのは、ヴィタリスのことをたずねるためであったことがわかると、かれはすぐに落ち着いた。
「やれやれ、じいさん、死にましたか」とかれは言った。
「おまえはその老人《ろうじん》を知っているだろう」
「はい」
「じゃああの老人について知っていることを残《のこ》らず話してくれ」
「なんでもないことでございます。あの男の名前はヴィタリスではございま
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