ホテルの門口《かどぐち》に来ていると言った。マチアはさっそく一頭引きの馬車の上に、むかしから乗りつけている人のように乗りこんだ。カピもいっこうきまり悪そうなふうもなく中へとびこんで、ビロードのしとねの上にゆうゆうと上がりこんだ。
 馬車の道はわずかであった。あまりわずかすぎたと思った。わたしはゆめの中を歩いている人のように、ばかげた考えで頭の中がいっぱいであった。いや、すくなくともわたしの考えたことはばかげていたらしかった。わたしたちは客間に通された。ミリガン夫人《ふじん》と、アーサと、リーズがそこにいた。アーサは手を差《さ》し延《の》べた。わたしはかれのほうへかけ出して行って、それからリーズにキッスした。ミリガン夫人はわたしにキッスした。「やっとのことで」とかの女は言った。「あなたのものであるはずの位置《いち》に、あなたを置《お》くことができるようになりました」
 わたしはこう言われたことばの意味を話してもらおうと思って、かの女の顔を見た。かの女はドアのほうへ寄《よ》って、それを開けた。そのときこそほんとうにびっくりするものが現《あらわ》れた。バルブレンのおっかあがはいって来た。その
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