菜《やさい》は……」
いちいちの口上《こうじょう》にマチアは目を丸《まる》くした。でもかれはいっこう閉口《へいこう》したふうを見せなかった。
「なんでもいいように見計らってください」とかれは冷淡《れいたん》に答えた。
給仕《きゅうじ》はもったいぶって部屋《へや》を出て行った。
そのあくる日ミリガン夫人《ふじん》は、わたしたちに会いに来た。かの女は洋服屋とシャツ屋を連《つ》れて来た。わたしたちの服とシャツの寸法《すんぽう》を計らせた。ミリガン夫人は、リーズがまだ話をしようと努《つと》めていることを話して、医者はもうじき治《なお》ると言っていると言った。それから一時間わたしたちの所にいて、またわたしに優《やさ》しくキッスし、マチアと固《かた》い握手《あくしゅ》をして、出て行った。
四日|続《つづ》けてかの女は来た。そのたんびにだんだん優しくも、愛情《あいじょう》深《ぶか》くもなっていったが、やはりいくらかひかえ目にするところがあった。五日目に、わたしが白鳥号でおなじみになった女中が夫人《ふじん》の代わりに来て、ミリガン夫人《ふじん》がわたしたちを待ち受けている、もうおむかえの馬車が
前へ
次へ
全326ページ中311ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング