所にミリガン夫人《ふじん》も、アーサもいるにちがいなかった。
「でもだれが歌を歌ったのだろう」
これがマチアもわたしも、やっとことばが出るといきなり持ち出した質問《しつもん》であった。
「わたしよ」とリーズが答えた。
リーズが歌っていた。リーズが話しかけていた。
医者は、いつかリーズがかの女のことばを取り返すだろう、それはたぶんはげしい感動の場合だと言っていたが、わたしはそんなことができるはずがないと思っていた。でも目の前に奇跡《きせき》は行われた。そしてそれはわたしがかの女の所に来て、いつも歌い慣《な》れたナポリ小唄《こうた》を歌うのを聞いて、はげしい感動を起こしたしゅんかんに、かの女がその声を回復《かいふく》したことがわかった。わたしはそう思って、深く心を打たれたあまり、両手を延《の》ばしてからだをまっすぐにした。
「ミリガン夫人《ふじん》はどこにいるの」とわたしはたずねた。「それからアーサは」
リーズはくちびるを動かしたが、ほんの聞き取れない音を出しただけで、じれったくなって、いつもの手まねのことばになった。かの女はまだことばをほんとうに出すだけに器用《きよう》に舌《した
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