いちばん重い責任《せきにん》をしょわされる。母親が亡《な》くなってから、エチエネットが家庭の母親であった。かの女は早くから学校をやめさせられ、うちにいてお料理《りょうり》をこしらえたり、お裁縫《さいほう》をしたり、父親や兄弟たちのために家政《かせい》を取らなければならなかった。かれらはみんなかの女がむすめであり、姉《あね》であることを忘《わす》れきって、女中の仕事をするのばかり見慣《みな》れていた。いくらひどく使っても出て行く心配もなければ、不平《ふへい》を言う気づかいもない重宝《ちょうほう》な女中であった。かの女が外へ出ることはめったになかったし、けっしておこったこともなかった。リーズをうでにかかえてベンニーの手を引きながら、朝は暗いうちから起きて、父親の朝飯《あさめし》をこしらえ、夜はおそくまでさらを洗《あら》ったりなどをしてからでなくては、とこにはいらなかったから、かの女はまるで子どもでいるひまがなかった。十四だというのにかの女の顔はきまじめにしずんでいた。それは年ごろのむすめの顔ではなかった。
わたしはハープをかべにかけてから、ゆうべ出会った出来事をぽつぽつ話しだした。石切り
前へ
次へ
全326ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング