。ところが事情《じじょう》がそういうわけでは、わたしはおくびょうにならずにはいられなかった。
 さてある日、冷《つめ》たいみぞれが降《ふ》って、いつもより早くうちへ引き上げて来たとき、わたしは両うでに勇気《ゆうき》をこめて、長らく心にかかっている問題の口を切った。
 わたしの質問《しつもん》を受けると、父親はじっとわたしの顔を見つめた。けれどわたしはこの場合できそうに思っていた以上《いじょう》だいたんに、かれの顔を見返した。するとかれはにっこりした。その微笑《びしょう》にはどことなくとげとげしいざんこくな様子が見えたが、でも微笑は微笑であった。
「おまえがぬすまれて行ったとき」とかれはそろそろと話しだした。「おまえはフランネルの服と麻《あさ》の服と、レースのボンネットに、白い毛糸のくつ下と、それから白い縫箔《ぬいはく》のあるカシミアの外とうを着ていた。その着物のうち二|枚《まい》までは、F《エフ》・D《デー》、すなわちフランシス・ドリスコルの頭字《かしらじ》がついていたが、それはおまえをぬすんだ女が切り取ってしまったそうだ。そのわけは、そうすれば手がかりがないと思ったからだ。なんならお
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