がさけんだ。
「じゃあ、おまえは良心《りょうしん》に罪《つみ》をしょわせたまま神様の前に出るつもりか」と先生がさけんだ。「あの男に懺悔《ざんげ》させろ」
「おれは懺悔する、おれは懺悔する」と大力《たいりき》のコンプルーが、子どもよりもっといくじなく泣《な》いた。
「水の中にほうりこめ。水の中にほうりこめ」とパージュとベルグヌーが、「先生」 の後ろに丸《まる》くなっていた罪人《ざいにん》にとびかかって行きそうにした。
「おまえたち、この男を水の中にほうりこみたいなら、おれもいっしょにほうりこめ」
「ううん、ううん」やっとかれらは水の中に罪人をほうりこむだけはしないことにしたが、それには一つの条件《じょうけん》がついた。罪人はすみっこにおしやられて、だれも口をきいてもいけないし、かまってもやるまいというのだった。
「そうだ、それが相当だ」と「先生」が言った。「それが公平な裁《さば》きだ」
「先生」のことばはコンプルーに下された判決《はんけつ》のように思われたので、それがすむとわたしたちはみんないっしょに、できるだけ遠くはなれて、この悪い事をした人間との間に空き地をこしらえた。数時間のあいだ
前へ 次へ
全326ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング