とばかりが心の中にあった。
「先生、おまえの言いたいことを言えよ」とベルグヌーがさけんだ。「おまえ水をかい出すにどのくらいかかるか、勘定《かんじょう》していたじゃないか。だがとてもまに合いそうもないぜ。おれたちは空腹《くうふく》か窒息《ちっそく》で死ぬだろう」
「しんぼうしろよ」と「先生」が答えた。「おれたちは食べ物なしにどれくらい生きられるか知っている。それでちゃんと勘定がしてあるのだ。だいじょうぶ、まに合うよ」
このしゅんかん、大きなコンプルーが声を立ててすすり泣《な》きを始めた。
「神様の罰《ばち》だ」とかれはさけんだ。「おれは後悔《こうかい》する。おれは後悔する。もしここから出られたら、おれはいままでした悪事のつぐないをすることをちかう。もし出られなかったら、おまえたち、おれのために神様におわびをしてくれ。おまえたちはあのヴィダルのおっかあの時計をぬすんで、五年の宣告《せんこく》を受けたリケを知っているか……だがおれがそのどろぼうだった。ほんとうはおれがとったのだ。それはおれの寝台《ねだい》の下にはいっている……おお……」
「あいつを水の中にほうりこめ」とパージュとベルグヌー
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