ずにおかないような声で言った。
「しっかりしろ。みんな、ここにしばらくいるうちに、仕事をしなければならない。こんなふうにみんなごたごた固《かた》まっていても、しかたがない。ともかくからだを落ち着ける穴《あな》をほらなければならない」
 かれのことばはみんなを落ち着かせた。てんでに手やランプのかぎで土をほり始めた。この仕事は困難《こんなん》であった。なにしろわたしたちがかくれた竪坑《たてこう》はひどい傾斜《けいしゃ》になっていて、むやみとすべった。しかも足をふみはずせば下は一面の水で、もうおしまいであった。
 でもどうやらやっと足だまりができた。わたしたちは足を止めて、おたがいの顔を見ることができた。みんなで七人、「先生」とガスパールおじさんに、三人の坑夫のパージュ、コンプルー、ベルグヌー、それからカロリーという車おしのこぞう、それにわたしであった。
 鉱山の物音は同じはげしさで続《つづ》いた。このおそろしいうなり声を説明《せつめい》することばはなかった。いよいよわれわれの最後《さいご》のときが来たように思われた。恐怖《きょうふ》に気がくるったようになって、わたしたちはおたがいに探《さぐ
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