た。すると地面と坑道《こうどう》のかべにずしんと当たるきみょうな音が聞こえて、水の走る音がした。わたしはガスパールおじさんのほうへかけてもどった。
「水が鉱坑《こうこう》にはいって来たのです」とわたしはさけんだ。
「ばかなことを言うな」
「まあ、お聞きなさい。あの音を」
 そう言ったわたしの様子には、ガスパールおじさんにいやでも仕事をやめて耳を立てさせるものがあった。物音はいよいよ高く、いよいよものすごくなってきた。
「いっしょうけんめいかけろ。鉱坑《こうこう》に水が出た」とかれがさけんだ。
「先生、先生」とわたしはさけんだ。
 わたしたちは坑道《こうどう》をかけ下りた。老人《ろうじん》もいっしょについて来た。水がどんどん上がって来た。
「おまえさん先へおいでよ」とはしご段《だん》まで来ると老人は言った。
 わたしたちはゆずり合っている場合ではなかった。ガスパールおじさんは先に立った。そのあとへわたしも続《つづ》いて、それから「先生」が上がった。はしご段《だん》のてっぺんに行き着くまえに大きな水がどっと上がって来てランプを消した。
「しっかり」とガスパールおじさんがさけんだ。わたしたち
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