増《ふ》やすという、やくそくができあがった。わたしはカピに向かってこの計画を言い聞かせると、かれはよくわかったとみえて、さっそく賛成《さんせい》の意をほえてみせた。
 あくる日、ガスパールおじさんのあとにくっついて、わたしは深いまっ暗な鉱山《こうざん》に下りて行った。かれはわたしにじゅうぶん気をつけるように言い聞かせたが、その警告《けいこく》の必要《ひつよう》はなかった。もっとも昼の光をはなれて地の底《そこ》へはいって行くということには、ずいぶんの恐怖《きょうふ》と心配がないではなかった。ぐんぐん坑道《こうどう》を下りて行ったとき、わたしは思わずふりあおいだ。すると、長い黒いえんとつの先に見える昼の光が、白い玉のように、まっ暗な星のない空にぽっつりかがやいている月のように見えた。やがて大きな黒いやみが目の前に大きな口を開いた。下の坑道《こうどう》にはほかの坑夫《こうふ》がはしご段《だん》を下りながら、ランプをぶらぶらさげて行くのが見えた。わたしたちはガスパールおじさんが働《はたら》いている二|層《そう》目の小屋に着いた。車をおす役に使われているのは、ただ一人「先生」と呼《よ》ばれている
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