たし、かれもしたがってうちにぶらぶらしていなければならなくなったからである。でもそれはかれにはひどく具合の悪いことであった。
「じゃあぼくで代わりは務《つと》まりませんか」とかれが代わりの子どもをどこにも求《もと》めかねて、ぼんやりうちに帰って来たとき、わたしは言った。
「どうも車はおまえには重たすぎようと思うがね」とかれは言った。「でもやってみてくれようと言うなら、わたしは大助かりさ。なにしろほんの五、六日使う子どもを探《さが》すというのはやっかいだよ」
 この話をわきで聞いていたマチアが言った。
「じゃあ、きみが鉱山《こうざん》に行っているうち、ぼくはカピを連《つ》れて出かけて行って、雌牛《めうし》のお金の足りない分をもうけて来よう」
 明るい野天の下で三月くらしたあいだに、マチアはすっかり人が変《か》わっていた。かれはもうお寺のさくにもたれかかっていたあわれな青ざめた子どもではなかった。ましてわたしが初《はじ》めて屋根裏《やねうら》の部屋《へや》で会ったとき、スープなべの見張《みは》りをして、絶《た》えず気のどくな痛《いた》む頭を両手でおさえていた化け物のような子ではなかった。マ
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