鉱山からすこしはなれた所にあった。
わたしたちがその家に行き着くと、ドアによっかかって二、三人、近所の人と話をしていた婦人《ふじん》が、坑夫《こうふ》のガスパールは六時でなければ帰らないと言った。
「おまえさん、なんの用なの」とかの女はたずねた。
「わたしはおいごさんのアルキシー君に会いたいのです」
「ああ、おまえさん、ルミさんかえ」とかの女は言った。「アルキシーがよくおまえさんのことを言っていたよ。あの子はおまえさんを待っていたよ」こう言ってなお、「そこにいる人はだれ」と、マチアを指さした。
「ぼくの友だちです」
この女はアルキシーのおばさんであった。わたしはかの女がわたしたちをうちの中へ呼《よ》び入れて休ませてくれることと思った。わたしたちはずいぶんほこりをかぶってつかれていた。けれどかの女はただ、六時にまた来ればアルキシーに会える、いまはちょうど鉱山《こうざん》へ行っているところだからと言っただけであった。
わたしはむこうから申し出されもしないことを、こちらから請求《せいきゅう》する勇気《ゆうき》はなかった。
わたしたちはおばさんに礼を述《の》べて、ともかくなにか食べ物を
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