た。コルベイユへ着くと、わたしはさし当たりなくてならないと思う品を二つ三つ買うことができた。第一はコルネ、これは古道具屋で三フランした。それからくつ下に結《むす》ぶ赤リボン、最後《さいご》にもう一つの背嚢《はいのう》であった。代わりばんこに重い背嚢をしょうよりも、てんでんが軽い背嚢をしじゅうしょっているほうが楽であった。
「きみのような、人をぶたない親方はよすぎるくらいだ」とマチアがうれしそうに笑《わら》いながら言った。
わたしたちのふところ具合がよくなったので、わたしは少しも早く、バルブレンのおっかあの所に向かって行こうと決心した。わたしはかの女におくり物を用意することができた。わたしはもう金持ちであった。なによりもかよりも、かの女を幸福にするものがあった。それはあのかわいそうなルセットの代わりになる雌牛《めうし》をおくってやることだ。わたしが雌牛をやったら、どんなにかの女はうれしがるだろう。どんなにわたしは得意《とくい》だろう。シャヴァノンに着くまえに、わたしは雌牛を買う。そしてマチアがたづなをつけて、すぐとバルブレンのおっかあの背戸《せど》へ引いて行く。
マチアはこう言うだろ
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