た。花よめさんがやはりそれを見つけた。
「もうたくさんよ」とかの女は言った。「あの小さい子は、つかれきっていますわ。さあ、みんな楽師《がくし》たちにやるご祝儀《しゅうぎ》をね」
わたしはぼうしをカピに投げてやった。カピはそれを口で受け取った。
「どうかわたくしどもの召使《めしつか》いにお授《さず》けください」とわたしは言った。
かれらはかっさいした。そしてカピがおじぎをするふうを見て、うれしがっていた。かれらはたんまりくれた。花むこさまはいちばんおしまいに残《のこ》ったが、五フランの銀貨《ぎんか》をぼうしに落としてくれた。ぼうしは金貨でいっぱいになった。なんという幸せだ。
わたしたちは夕食に招待《しょうたい》された。そして物置《ものお》きの中でねむる場所をあたえてもらった。
あくる朝この親切な百姓家《ひゃくしょうや》を出るとき、わたしたちには二十八フランの資本《もとで》があった。
「マチア、これはきみのおかげだよ」とわたしは勘定《かんじょう》したあとで言った。「ぼく一人きりでは楽隊《がくたい》は務《つと》まらないからねえ」
二十八フランをかくしに入れて、わたしたちは福々であっ
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