フォリはマチアの持って来たあかじみた小さな帳面には目もくれなかった。初《はじ》めのいおうくさいマッチをつけた子どもに、来いと合図をした。
「おまえにはきのう一スー貸《か》してある。それをきょう持って来るやくそくだったが、いくら持って来たな」
子どもは赤くなって、当惑《とうわく》を顔に表して、しばらくもじもじしていた。
「一スー足りません」とかれはやっと言った。
「はあ、おまえは一スー足りないのかね。それでいいのだね」
「きのうの一スーではありません。きょう一スー足りないのです」
「それで二スーになる。おれはきさまのようなやつを見たことがない」
「わたしが悪いんではないんです」
「言《い》い訳《わけ》をしなさんな。規則《きそく》は知っているだろう。着物をぬぎなさい。きのうの分が二つ、きょうの分が二つ。合わせて四つ。それから横着《おうちゃく》の罰《ばつ》に夕食のいもはやらない。リカルド、いい子や。おまえはいい子だから、気晴らしをさせてやろう。むちをお取り」
二本目のマッチをつけた子どものリカルドが、かべから大きな結《むす》び目《め》のある皮ひもの二本ついた、柄《え》の短いむちを下ろした
前へ
次へ
全320ページ中313ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング