見わたすかぎり家が建《た》てこんでいた。それもボルドーや、ツールーズや、リヨンなどに比《くら》べては、ずっとびんぼうらしいあわれな小家《こいえ》ばかりであった。
雪がほうぼうにうず高く積《つ》み上げられていて、黒く固《かた》まったかたまりの上に、灰《はい》やくさった野菜《やさい》や、いろいろのきたない廃物《はいぶつ》が投げ捨《す》てられてあった。空気はいやなにおいにむせるようであった。その中を荷車がごろごろ通って行くが、人びとはそれをうまくかわしかわし歩いていた。
「ここはどこです」とわたしは言った。
「パリだよ」
どこに大理石のうちがあるか。それから黄金の木が。そしてりっぱに着かざった人たちが。これが見たい見たいとあこがれていたパリであったか。わたしはこんな場所で、親方に別《わか》れて……カピに別れて、この冬じゅうくらさなければならなかったのか。
ルールシーヌ街《まち》の親方
いま、わたしのぐるりを取《と》り巻《ま》いているものは、気味の悪いものばかりであったが、わたしはいっしょうけんめい好奇《こうき》のの目を見張《みは》って新しい周囲《しゅうい》を見回した。そ
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