たしはおまえを捨てる権利《けんり》がないのだ。それは覚《おぼ》えておいで。わたしはあの優《やさ》しいおくさんが、おまえを引き取って自分の子にして育てようというのを、聞かなかった。あの日からわたしはおまえのためにできるだけつくしてやる義務《ぎむ》ができたのだ。だがわたしはいまの場合、なにもしてやることができない。それでわたしは別《わか》れるのがいちばんいいと考えたわけだ。それもほんのしばらくのあいだだ。わたしたちはこの時候《じこう》の悪い二、三か月だけも別《わか》れているほうがいいのだ。カピのほかみんないなくなってしまった一座《いちざ》では、パリにいてもなにができよう」
かれの名が出ると、かわいいカピはわたしたちのそばへやって来た。かれは前足を右の耳の所へ上げて、軍隊《ぐんたい》風の敬礼《けいれい》をして、それを胸《むね》に置《お》いて、あたかもわたしたちはかれの誠実《せいじつ》に信頼《しんらい》することができるというようであった。親方は犬の頭に優《やさ》しく手を当てそれをおさえた。
「そうだよ。おまえは善良《ぜんりょう》な忠実《ちゅうじつ》な友だちだ。けれど情《なさ》けないことにはほ
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