「いや、いい子はおまえだよ。じつに親切ないい子だ。人間は一生にしみじみ人の親切を感ずるときがあるものだ。何事もよくいっているときには、だれが自分といっしょにいるか、ろくろく考えることなしに世の中を通って行く。けれど物事がちょいちょいうまくいかなくなり、悪いはめには落ちてくるし、とりわけ人間が年を取ってくると、だれかにたよりたくなるものだ。わたしがおまえにたよると聞いたら、びっくりするかもしれないが、でもそれはまったくだよ。ただおまえがわたしのことばを聞き、わたしをなぐさめてくれて、なみだを流してくれると、わたしはたまらないほどうれしい。わたしも不幸《ふしあわ》せな人間であったよ」
わたしはなんと言っていいかわからなかった。わたしはただかれの手をさすった。
「しかも不幸《ふこう》なことには、わたしたちはおたがいのあいだがだんだん近づいてこようというじぶんになって、別《わか》れなければならないのだ」
「でもあなたはわたしをたった一人パリへ捨《す》てて行くのではないでしょう」とわたしはこわごわたずねた。
「いいや、けっしてそんなことはない。おまえはこの大きな町で自分一人なにができよう。わ
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