げた。
「紳士《しんし》ならびに貴女《きじょ》がた。じまんではございませんが、本夕《ほんせき》はおかげさまをもちまして、番組どおりとどこおりなく演《えん》じ終わりましたとぞんじます。しかしまだろうそくの火も燃《も》えつきませんことゆえ、みなさまのお好《この》みに任《まか》せ、今度は一番てまえが歌を歌ってお聞きに入れようと思います。いずれ一座《いちざ》のカピ丈《じょう》はもう一度おうかがいにつかわしますから、まだご祝儀《しゅうぎ》をいただきませんかたからも、今度はたっぷりいただけますよう、まえもってご用意を願《ねが》いたてまつります」
 親方はわたしの先生ではあったが、わたしはまだほんとうにかれの歌うのを開いたことはなかった。いや、少なくともその晩《ばん》歌ったように歌うのを開いたことがなかった。かれは二つの歌を選《えら》んだ。一つはジョセフの物語で、一つはリシャール獅子王《ししおう》の歌であった。
 わたしはほんの子どもであったし、歌のじょうずへたを聞き分ける力がなかったが、親方の歌はみょうにわたしを動かした。かれの歌を聞いているうちに、目にはなみだがいっぱいあふれたので、舞台《ぶたい
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