《ぎきょうしん》に信頼《しんらい》する。見物は残《のこ》らず見て聞いてかっさいをしたあとで、いくらでもお志《こころざし》しだいにはらえばいいというのである。
 これがわたしにはとっぴょうしもなくだいたんなやり方に思われた。だれがわたしたちをかっさいする者があろう。カピはたしかに高名になってもいいだけのことはあったけれど、わたしが……わたしが天才だなどとは、どこをおせばそんな音《ね》が出るのだ。
 たいこの音を聞くと、カピはほえた。ジョリクールはちょうどひじょうに悪かった最中《さいちゅう》であったが、やはり起き上がろうとした。たいこの音とカピのほえ声を聞くと、芝居《しばい》の始まる知らせであるということをさとったようであった。
 わたしは無理《むり》にかれをねどこにおしもどさなければならなかった。するとかれは例《れい》のイギリスの大将《たいしょう》の軍服《ぐんぷく》――金筋《きんすじ》のはいった赤い上着とズボン、それから羽根《はね》のついたぼうしをくれという合図をした。かれは両手を合わせてひざをついて、わたしにたのみ始めた。いくらたのんでも、なにもしてもらえないとみると、かれはおこって見
前へ 次へ
全320ページ中270ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング