いことを話した。
こうなってただ一つ残《のこ》った手だてとしては、今夜さっそく一|興行《こうぎょう》やるほかにないとかれは考えていた。
ゼルビノもドルスもジョリクールもいない興行。まあ、そんなことができることだろうか、とわたしは思った。
それができてもできなくても、どう少なく見積《みつ》もってもすぐ四十フランという金をこしらえなければならないとかれは言った。ジョリクールの病気は治《なお》してやらなければならないし、部屋《へや》には火がなければならないし、薬も買わなければならないし、宿《やど》にもはらわなければならない。いったん借《か》りている物を返せば、あとはまた貸《か》してもくれるだろう。
この村で四十フラン。この寒空といい、こんなあわれない一座《いちざ》でなにができよう。
わたしが、ジョリクールといっしょに宿《やど》に待っているあいだに親方がさかり場で一けん見世物小屋を見つけた。なにしろ野天《のてん》で興行《こうぎょう》するなんということはこの寒さにできない相談《そうだん》であった。かれは広告《こうこく》のびらを書いて、ほうぼうにはり出したり、二、三|枚《まい》の板でかれ
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