れになにより困《こま》ったことは、それがわたしの責任《せきにん》だということであった。わたしはねむりさえしなかったら、かれらも出て行きはしなかった。
 親方は小屋に帰って行った。わたしはそのあとに続《つづ》きながら、一足ごとにふり返っては、立ち止まって耳を立てた。
 雪のほかにはなにも見えなかった。なんの声も聞こえなかった。
 こうしてわたしたちが、小屋にはいると、もう一つびっくりすることがわたしたちを待っていた。火の中に投げこんでおいたえだは勢《いきお》いよく燃《も》え上がって、小屋のすみずみの暗い所まで照《て》らしていた。けれどもジョリクールはどこへ行ったか見えなかった。かれの着ていた毛布《もうふ》はたき火の前にぬぎ捨《す》ててあった。けれどかれは小屋の中にはいなかった。親方もわたしも呼《よ》んだ。けれどかれは出て来なかった。
 親方の言うには、かれの目を覚《さ》ましたときには、さるはわきにいた。だからいなくなったのは、わたしたちが出て行ったあとにちがいなかった。燃《も》えているたいまつを雪の積《つ》もった地の上にくっつけるようにして、その足あとを見つけ出そうとした。でもなんの手が
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