を投げているのは雪の明かりであった。もうずっと寒くなっていた。ひどくこおっていた。すきまからはいる空気は氷のようであった。喪中《もちゅう》にいるような静《しず》けさの中に、雪の表面のこおりつく音がいく度となく聞こえた。
「ああ、この森のおくで雪の中にうめられてわたしたちはどうすればいいのだ。この雪と寒さの中で、この小屋でもなかったらどうなったであろう」
わたしはそっと音のしないように出たのであったが、やはり犬たちを起こしてしまった。中でもゼルビノは起き上がってわたしについて来た。夜の荘厳《そうごん》はかれにとってなんでもなかった。かれはしばらく景色《けしき》をながめたが、やがてたいくつして外へ出て行こうとした。
わたしはかれに中にはいるように命令《めいれい》した。ばかな犬よ。このおそろしい寒さの中でうろつき回るよりは、暖《あたた》かいたき火のそばにおとなしくしていたほうがどのくらいいいか知れない。かれは不承不承《ふしょうぶしょう》にわたしの言うことを聞いたが、しかしひどくふくれっ面《つら》をして、目をじっと入口に向けていた。よほどしつっこい、いったん思い立ったことを忘《わす》れない
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