であった。備《そな》えつけの家具も同様で、土の山と、二つ三つ大きな石がいすの代わりに置《お》いてあるだけであった。それよりもありがたかったのは、部屋のすみに赤れんがが五、六|枚《まい》、かまどの形に積《つ》んであったことである。なによりもまず火を燃《も》やさなければならぬ。
 なによりも火がいちばんのごちそうだ。
 さてまきだが、このうちでそれを見つけることは困難《こんなん》ではなかった。
 わたしたちはただかべや屋根からまきを引きぬいて来ればよかった。それはわけなくできた。
 まもなくたき火の赤いほのおがえんえんと立った。むろん小屋はけむりでいっぱいになったが、そんなことはいまの場合かまうことではなかった。わたしたちの欲《ほっ》しているのは火と熱《ねつ》であった。
 わたしは両手をついて、腹《はら》ばいになって火をふいた。犬は火のぐるりをゆうゆうと取り巻《ま》いて、首をのばして、ぬれた背中《せなか》を火にかざしていた。
 ジョリクールはやっと親方の上着の下からのぞくだけの元気が出て、用心深く鼻の頭を外に向けてそこらをながめ回した。安全な場所であることを確《たし》かめて満足《まんぞく》
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