火をまい上げそうにした。
 宿屋《やどや》の亭主《ていしゅ》は親方の顔を見て、
「わたしがあなただったら、きょうは出るどころではありません。いまにひどいふぶきになりますぜ」
「わたしは急いでいるのだ」と親方は答えた。「その大ふぶきの来るまえにトルアまで行きたいと思っている」
「六、七里(約二十四〜二十八キロ)もありますよ。一時間やそこらで行けるものですか」
 でもかまわずわたしたちは出発した。
 親方はジョリクールをしっかりからだにだきしめて、自分の温かみを少しでも分けてやろうとした。犬は固《かた》いこちこちな道を歩くのをうれしがって、先に立ってかけた。親方はデイジョンでわたしにひつじの毛皮服を買ってくれたので、わたしは毛を裏にしてしっかり着こんだ。これがこがらしでべったりからだにふきつけられていた。
 わたしたちは口を開くのがひどくふゆかいだったので、だまりこんで歩きながら、少しでも暖《あたた》まろうとして急いだ。
 もう夜明けの時間をよほど過《す》ぎていたが、空はまだまっ暗であった。東のほうに白っぽい帯《おび》のようなものが雪の間に流れてはいたが、太陽は出て来そうもなかった。
 野
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