でおおわれて、冬の日はすっかりかくれてしまった。大雪の近づいていることがわかっていた。
わたしたちがちょっとした大きな村に着くまではまだ雪にもならなかった。でも親方は、なんでもトルアの町へ早く行こうとあせっていた。そこは大きい町だから、ひじょうに悪い天気で五、六|日《にち》逗留《とうりゅう》しても、少しは興行《こうぎょう》を続《つづ》けて回る見こみがあった。「早くとこにおはいり」とその晩《ばん》宿屋《やどや》に着くと親方は言った。「あしたはなんでも早くからたつのだ……だが雪に降《ふ》りこめられてはたまらないなあ」
でもかれはすぐにはとこにはいらなかった。台所の炉《ろ》のすみにこしをかけて、寒《さむ》さでひどく弱っているジョリクールを暖《あたた》めていた。さるは毛布《もうふ》にくるまっていても、やはり苦しがって、うめき声をやめなかった。
あくる日の朝、わたしは言いつけられたとおり早く起きた。まだ夜が明けてはいなかった。空はまっ暗な雲が低《ひく》く垂《た》れて、星のかげ一つ見えなかった。ドアを開けると、はげしい風がえんとつにふき入って、危《あぶ》なくゆうべ灰《はい》の中にうずめたほだ
前へ
次へ
全320ページ中230ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング