でもそれはいつも白鳥号ではなかった。
ときどきわたしは思い切って船頭に聞いてみた。わたしの探《さが》す美しい船の模様《もよう》を話して、そういう船を見なかったかとたずねた。でもかれらはけっしてそういう船の通るのを見たことがなかった。
このごろでは親方も、わたしをミリガン夫人《ふじん》にわたそうと決心していた。少なくともわたしにはそう想像《そうぞう》されたから、もはやわたしの素性《すじょう》を告《つ》げたり、バルブレンのおっかあに手紙をやったりされるおそれがなくなった。そのほうの事件《じけん》は親方とミリガン夫人との間の相談《そうだん》でうまくまとめてくれるだろう。そう思って、わたしの子どもらしいゆめでいろいろに事件を処理《しょり》してみた。ミリガン夫人はわたしをそばに置《お》きたいと言うだろう。親方はわたしに対する権利《けんり》を捨《す》てることを承知《しょうち》してくれるだろう。それでいっさい事ずみだ。
わたしたちは何週間もリヨンに滞在《たいざい》していた。そのあいだひまさえあればいく度もわたしはローヌ川と、ソーヌ川の波止場《はとば》に行ってみた。おかげでエーネー、チルジット、
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