説明も、あまりよくはわからずにしまったが、親方が後悔《こうかい》しているということがわかって、わたしは心の底《そこ》に満足《まんぞく》した。
 もうこれでは親方も承知《しょうち》してくれるだろう。そうしてこれはわたしにとって大きな希望《きぼう》の目標《もくひょう》になった。
 それにしても、なぜ白鳥号には出会わないのであろう。
 それはローヌ川を上って行くはずであった。そうしてわたしたちはその川の岸に沿《そ》って歩いていた。
 それで歩きながらわたしの目は両側《りょうがわ》を限《かぎ》っている丘《おか》や、豊饒《ほうじょう》な田畑よりも、よけい水の上に注がれていた。
 わたしたちがアルルとか、タラスコンとか、アヴィニオン、モンテリマール、ヴァランス、ツールノン、ヴィエンヌなど、という町に着いたときに、いちばん先にわたしの行ってみるのは、波止場《はとば》か橋の上で、そこから川の上流を見たり、下流を見たり、わたしの目は白鳥号を探《さが》した。遠方に半分、深い霧《きり》にかくれてぼんやりした船のかげでも見つけると、それが白鳥号であるかないか、見分けられるほど大きくなるのを待つのであった。
 
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