にするからと言って来た。わたしは犬たちとジョリクールを連《つ》れて、かれに会いに停車場《ていしゃじょう》まで行くことを許《ゆる》された。
 その朝になると、犬たちはなにか変《か》わったことでも起こると思ったか、ひどくはしゃいでいた。ジョリクールだけは知らん顔をしていた。わたしはひじょうに興奮《こうふん》していた。きょうこそわたしの運命が決められる日であった。わたしに勇気《ゆうき》があったら、親方にたのんで捨《す》て子《ご》だということをミリガン夫人《ふじん》に言ってもらわないようにたのむことができたであろう。けれどもわたしはかれに対してすら『捨《す》て子《ご》』ということばを口に出して言うことができないような気がしていた。わたしは犬をひもでつないで、ジョリクールは上着の下に入れて、停車場《ていしゃじょう》の片《かた》すみに立って待っていた。わたしは身の回りに起こっていることはほとんど目にはいらなかった。汽車の着いたことを知らせてくれたのは犬であった。かれらは主人のにおいをかぎつけた。
 ふとわたしのおさえているひもを前に引くものがあった。わたしはうっかり見張《みは》りをゆるめていたので
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