申し出を承知してくだされば、今度はあなたのご両親と相談することにしましょう。むろんだまっていることはできないからね」
 この最後《さいご》のことばで、わたしの美しいゆめは破《やぶ》れた。
 両親に相談《そうだん》する。そうしたらかれらはわたしが内証《ないしょう》にしようとしていることをすぐ言いたてるだろう。わたしが捨《す》て子《ご》だということを言いたてるだろう。
 ああ捨《す》て子《ご》。そうなればアーサもミリガン夫人《ふじん》もわたしをきらうようになるだろう。
 まあ自分の父親も母親も知らない子どもが、アーサの友だちであったか。
 わたしはミリガン夫人の顔をまともにながめた。なんと言っていいか、わたしはわからなかった。かの女はびっくりしてわたしの顔を見た。わたしがどうしたのか、かの女はたずねようとしたが、わたしはそれに答えもできずにいた。たぶん親方が帰って来るという考えに気が転倒《てんとう》していると考えたらしく、かの女はそのうえしいては問わなかった。
 幸いにじきねむる時間が来たので、アーサからいつまでもふしぎそうな目で見られずにすんだ。やっと心配しながら自分の部屋《へや》に一人
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