んべんしてやろうという意を示《しめ》した。
甲板《かんぱん》をそうじしていた男が、気軽に板をわたしてくれたので、わたしは部下を連《つ》れて野原へ出た。
犬とかけっこしたり、ジョリクールをからかったり、ほりをとんだり、木登りをしたりして遊んでいるうちに時間がたった。帰ってみると、馬ははこやなぎ[#「はこやなぎ」に傍点]の木につながれて、すっかり仕度ができていて、小舟《こぶね》はいつでも出発するようになっていた。
わたしたちがみんな船の上に乗ってしまうと、まもなく船をつないだ大づなは解《と》かれて、船頭はかじを、御者《ぎょしゃ》は手《た》づなを取った。引きづなの滑車《かっしゃ》がぎいぎい鳴って、馬は引き船の道をカッパカッパ歩きだした。
これでも動いているかと思うはど静《しず》かに船は水の上をすべって行った。そこに聞こえるものは小鳥の歌と、船に当たる水の音、それから馬の首につけたすずのチャランチャランだけであった。
所どころ水はこい緑色に見えてたいへん深いようであった。そうかと思うと水晶《すいしょう》のようにすみきっていて、水の底《そこ》できらきら光る小石だの、ビロードのような水草
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