《ゆわ》えつけて動けないようにした。けれどそれをそのままうちの中に閉じこめておけば、今度は気鬱《きうつ》と空気の悪いために死ぬかもしれない。
そこでかの女は子どものためにきれいな、ういて動く家をこしらえてやって、フランスの国じゅうのいろいろな川を旅行しているのであった。その両岸の景色《けしき》は、病人の子どもがねながら、ただ目を開いていさえすれば、目の前に動いて行くのであった。
もちろんこのイギリスの貴婦人《きふじん》とむすこについて、わたしはこれだけのことを残《のこ》らず、初《はじ》めての日に聞《き》いたのではなかった。わたしはときどきかの女といるあいだに少しずつ細かい話を聞いた。
わたしが初めの日に聞いたことは、ただこの船の名が白鳥号ということ、それからわたしが部屋《へや》と定められた船室がどんなものであるかということだけであった。
わたしは高さ七|尺《しゃく》(約二メートル)、はば三、四尺(約〇・九〜一・二メートル)のかわいらしい船室を一つ当てがわれた。それはなんというふしぎな部屋《へや》におもわれたであろう。部屋のどこにもしみ一つついていなかった。
その船室に備えつけ
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