ょく》行くえは知れなかった。そうなるとあとつぎの子どもがないので、この人がにいさんの財産《ざいさん》を相続《そうぞく》するつもりでいた。
 ところがやはり、ジェイムズ・ミリガン氏《し》は、にいさんからなにも相続することができなかった。なぜというに、夫人《ふじん》の夫《おっと》の死後七か月目に、夫人の二番目のむすこのアーサが生まれたのであった。
 けれどもお医者たちはこの病身な、ひよわな子どもの育つ見こみはないと言った。かれはいつ死ぬかもしれなかった。その子が死んだ場合には、ジェイムズ・ミリガン氏《し》は財産《ざいさん》を相続《そうぞく》することになるであろう。
 そう思ってかれはあてにして待っていた。
 けれども医者の予言《よげん》はなかなか実現《じつげん》されなかった。アーサはなかなか死ななかった。もう二十度も追っかけ追っかけ、なんぎな病《やまい》という病にかかって、それでも生きていた。そのたんびにこの子を生かしたものは母親の看護《かんご》の力であった。
 最後《さいご》の病は腰疾《ようしつ》(こしの病気)であった。それにはしじゅう板にねかしておくがいいというので、板の上にからだを結
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