ですか」
「そうですよ。この子は病気で、この板にからだを結《ゆわ》えつけていなければならないのです。それで昼間のうち少しでもゆかいにくらせるように、こうして船こ乗せて外へ出るのです。それであなたがたの親方が監獄《かんごく》にはいっておいでのあいだ、よければここにわたしたちといっしょにいてください。あなたのその犬とおさるが毎日|芸《げい》をしてくれば、アーサとわたしが見物になってあげる。あなたはハープをひいてくれるでしょう。それであなたはわたしたちに務《つと》めてくれることになるし、わたしたちはわたしたちで、あなたがたのお役に立つこともありましょう」
船の上で。わたしはまだ船の上でくらしたことがなかったが、それはわたしの久《ひさ》しい望《のぞ》みであった。なんといううれしいこと。わたしは幸福に心のくらむような感じがした。なんという親切な人たちだろう。わたしはなんと言っていいかわからなかった。
わたしは貴婦人《きふじん》の手を取ってキッスした。
「かわいそうに」とかの女は優《やさ》しく言った。
かの女はわたしのハープを聞きたいと言った。そのくらい手軽ななぐさみですむことなら、わたしは
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