まもなく女中は食物をのせたテーブルを運んで来た。
「おかけ」と貴婦人は言った。
わたしは言われるままにさっそく、ハープをわきへ置《お》いて、テーブルの前のいすにこしをかけた。犬たちはわたしの回りに列を作ってならんだ。ジョリクールはわたしのひざの上でおどっていた。
「きみの犬はパンを食べるの」とアーサはたずねた。
「パンを食べるどころですか」
わたしが一きれずつ切ってやると、かれらはむさぼるようにして見るまに平《たい》らげてしまった。
「それからおさるは」とアーサは言った。
けれども、ジョリクールのことで気をもむ必要《ひつよう》もなかった。わたしが犬にやっているあいだ、かれは横合いから肉入りのパンを一きれさらって、テーブルの下にもぐって、息のつまるほどほおばっていた。
わたし自身もパンを食べた。ジョリクールのようにのどにはつまらせなかったけれど、同じようにがつがつして、もっとたくさんほおばった。
「かわいそうに、かわいそうに」と貴婦人《きふじん》は言った。
アーサはなにも言わなかったが、大きな目を見張《みは》ってわたしたちをながめていた。わたしたちのよく食べるのにびっくりしたの
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