した。わたしはこの美しい婦人《ふじん》の前では一種《いっしゅ》のおそれを感じたけれども、貴婦人《きふじん》はひじょうに親切に話しかけてくれたし、その声はいかにも優《やさ》しかったから、わたしはほんとうのことを打ち明ける決心をした。またそれをしてならない理由はなにもなかった。
そこでわたしは貴婦人《きふじん》に向かって、ヴィタリスとわたしが別《わか》れたいちぶしじゅうを話した。ヴィタリス親方がわたしを保護《ほご》するために、刑務所《けいむしょ》に連《つ》れて行かれたこと、それから親方がいなくなってから、金を取ることができなくなった次第を話した。
わたしが話をしているあいだ、アーサは犬と遊んでいたが、わたしの言ったことばはよく耳に止めていた。
「じゃあきみたち、みんなずいぶんおなかがすいているだろう」とかれは言った。
このことばを動物たちはよく知っていて、犬は喜《よろこ》んでほえ始めるし、ジョリクールははげしくおなかをこすった。
「ああ、お母さま」とアーサがさけんだ。
貴婦人《きふじん》は聞き知らないことばで、半分開けたドアのすきから頭を出しかけていた女中に、なにか二言三言いった。
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