中《さいちゅう》に、ゼルビノがやぶのかげから出て来た。そして仲間《なかま》がそのそばを通ると、かれはずうずうしくもその仲間に割りこんで来た。
ハープをひきひき役者たちの監督《かんとく》をしながら、わたしはときどき子どものほうを見た。かれはわたしたちの演技《えんぎ》にひじょうなゆかいを感じているらしく見えたが、からだを少しも動かさなかった。寝台《ねだい》の上にあお向いたまま、ただ両手を動かして拍手《はくしゅ》かっさいした。半身不随《はんしんふずい》なのかしら、板の上に張《は》りつけられたように見えた。
いつのまにか風で船が岸にふきつけられていたので、いまは子どもをはっきり見ることができた。かれは金茶色の髪《かみ》の毛《け》をしていた。顔色は青白くて、すきとおった皮膚《ひふ》のもとに額《ひたい》の青筋《あおすじ》すら見えるほどであった。その顔つきには病人の子どもらしい、おとなしやかな、悲しそうな表情《ひょうじょう》があった。
「あなたがたのお芝居《しばい》のさじき料《りょう》がいかほどですね」と、貴婦人《きふじん》はたずねた。
「おなぐさみに相応《そうおう》した代《だい》だけいただきま
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