まま帰って来た。
「ゼルビノはどうした」
カピはおどおどした様子で、平伏《へいふく》した。わたしはかれのかたっぽの耳から血の出ているのを見た。わたしはそれで様子をさとった。ゼルビノはこの憲兵《けんぺい》に戦《たたか》いをしかけてきたのである。わたしはカピがそうして、いやいやわたしの命令《めいれい》に従《したが》いながらも、ゼルビノとの格闘《かくとう》にわざと負けてやったことがわかった。そしてそのため自分もやはりしかられるものと覚悟《かくご》しているらしく思われた。
わたしはかれをしかることができなかった。わたしはしかたがないから、ゼルビノが自分から帰って来るときを待つことにした。わたしはかれがおそかれ早かれ後悔《こうかい》して帰って来て、刑罰《けいばつ》を受けるだろうと思っていた。
わたしは一本の木の下に、手足をふみのばして横《よこ》になった。ジョリクールはしっかりとうでにだいていた。それはこのさるまでがゼルビノと仲間《なかま》になる気を起こすといけないと思ったからであった。ドルスとカピはわたしの足の下でねむっていた。時間がたった。ゼルビノは出て来なかった。とうとうわたしもうとう
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