ばつ》を加《くわ》えなければならなかった。けれどもそれをするためにはかれをつかまえなければならなかった。それはたやすいことではなかった。
 わたしはカピのほうへ向いた。
「行ってゼルビノを探《さが》しておいで」とわたしは重おもしく言った。
 かれはさっそく言いつけられたとおりするために出て行った。けれどもいつものような元気のないことをわたしは見た。かれの顔つきを見ていると、憲兵《けんぺい》としてかれはわたしの言いつけを果《は》たすよりも、弁護人《べんごにん》としてゼルビノをかばってやりたいように見えた。
 わたしはかれが囚人《しゅうじん》を連《つ》れて帰って来るのを、べんべんとこしかけて待つほかはなかった。気ちがいじみたかけっこをしたあとで、休息するのがうれしかった。わたしたちが休んだ所はちょうどこんもりした木かげと、両側《りょうがわ》に広びろと野原の開けた、堀割《ほりわり》の岸であった。ツールーズを出て初《はじ》めて、青あおした、すずしいいなか道に出たのだ。
 一時間たったが、犬たちは帰って来なかった。わたしはそろそろ心配になりだしたとき、やっとカピが独《ひと》りぼっち首をうなだれた
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