たちは追っ手をはるかぬいてしまった。けれどもやはりどんどんかけ続《つづ》けて、いよいよ息がつけなくなるまで止まらなかった。わたしたちは少なくとも三マイル(約五キロ)も走った。ふり返って見るともうだれも追っかけて来なかった。カピとドルスはやはりわたしのすぐ後について来た。ゼルビノは遠くにはなれていた。たぶんぬすんだ肉を食べるので手間を取ったのであろう。
 わたしはかれを呼《よ》んだ。けれどもかれはひどい刑罰《けいばつ》に会うことを知りすぎるほど知っていた。そこでわたしのほうへは寄《よ》って来ないで、できるだけ早くかけ出したのである。かれは飢《う》えていた。それだから肉をぬすんだのだ。けれどもわたしはそれを口実《こうじつ》として許《ゆる》すことはできなかった。かれはぬすみをした。わたしが仲間《なかま》の間に規律《きりつ》を保《たも》とうとすれば、罪《つみ》を犯《おか》したものは罰《ばっ》せられなければならない。それをしなかったら、つぎの村へ行って、今度はドルスが同じ事をするであろう。そうなるとカピまでが誘惑《ゆうわく》に負けないとは言えぬ。
 わたしはゼルビノに対し、公然刑罰《こうぜんけい
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